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夢みたいな、夢の話し。 [超夢]



ぼくはどうやら大事な発明を

すでにしているらしい。


でもそれにはまったく気付かずに生きている。


ある日どこか大きな会場で

なにかの展示(詳しくは覚えていない)を見るが

会場は激混み、芋洗いの様相。


しかも、入場したが最後

終わるまでその会場から出られない。



やっと終わって

その場にいた人たちは

我先に出口階段へと向かう。



地上3階が入り口だったな、そういえば。



ぼくはといえば

この後なにもないし

ゆっくり出ればいいだけだ。



そうしようとするも

狂った潮流のように

人々はただただ出口へ向かい

ぼくは背中を押され続け

やがて出口へ到達。



ここからはいくつか階段もエスカレーターもあるので

今ほど押されはしないだろう。



ほっとすると

裏手に誰も見向きもしない狭い階段が。



え?

なんでみんなこれ使わないの?



空いてる。

通行止めとも書いてない。

降りよう。



ぼくの他には

あと数人しかいないその階段を

今観た展示を反芻しつつ

一歩一歩ゆっくりと降りる。



ああ、やっぱり

自分のペースが、いい。



もうじき階段が終わろうという時

ぼくの視野に

どこか知っている笑顔が見えた。


ニコニコと手を降ってぼくを見ている。


Q大学のF教授だ。



なんて久しぶりなんだ。



近付いて握手をする。

昔の彼の手の感触そのまま。

優しい手。

眼鏡の向こうには同じく

優しい眼があった。



「お待ちしてましたよ、さぁ、行きましょう」



え?

なんでぼくが今日ここに居ることを?

なんでしかもぼくがこの階段から降りることも?



質問しようとするそのタイミングで

右肩をポンと叩かれる。

すべてはお見通しということらしい。



「それでね、加藤さん、あなたの考えをですね、

お話ししていただきたいグループがありまして、

今日そちらへこれからお連れしたいのですが」



たしかにぼくはこれから

なにもスケジュールは、ない。


流れが分からないまま

でも、どこにも無理のない話なので

すんなりと快諾。



小柄な白い乗用車だが

とても質感の高い後部座席に教授と並んで座る。

前には運転手一人のみ。



数十年ぶりの再会なので

お互いの近況報告をしあっていると

ちょっと渋滞にはまってしまう。



教授はぼくよりだいぶ年配だが

機を見るに敏で、すぐに

「加藤さん、あそこで一休みしましょう」

とカフェのようなお店を指差す。



むろんOKだ。

ぼくにはこの後なにもない

まな板の鯉だし。



車を出ると、海の香りがした。



その店に入ると

客のほとんどは中国の人たちだった。

きっと観光地なんだな。



席を案内されて座るやいなや

教授はスマホでちょっと遅れると連絡を入れ

クラッチバッグからは

見たことのないタブレットを出し

電源を入れタッチパネルを数回操作しスワイプ

・・・すると、その背後にいた中国の人が

たどたどしい日本語で

「それは最新式のですね、

中国ではまだ手に入りません、

中国ではまだこのモデルまで」

といって、自分が持っているタブレットを見せる。



教授「ああ、一つ前のモデルですね、

もしよろしかったら私のを触ってごらんになりますか?」

といって差し出す。



その外国人、パッと顔が明るくなり

子どものような笑顔が浮かぶ。



IT関係にあまり興味のないぼくにとって

この光景は異次元だ。

大人の顔色が一瞬で笑顔に変わるなんて。



ぼーっとその光景を見るでもなく見ていると

「そうなんです、ここにおられる彼も、

この開発に関わっておられるんですよ」

とぼくを紹介する。



え?

そうなんだっけ?

ぼくが?

なにを?



「彼の発明があって、

それゆえにこの新しいモデルが世に出たわけです」

すると、その外国人は

これ以上の笑顔はないだろうというくらいの笑顔で

ぼくに握手を求めてきた。



訳も分からずにただ挨拶に応じていると、

「さ、加藤さん、そろそろ道も空いてきたようだし、行きましょうか」

といって席を立った。



ぼくも続いて席を立つべく

ワラーチの紐を絞め直す。



席を立とうとしたその時

左側にいたフィリピン系の女性がぼくのシャツを引っ張る。



なにかと思って振り返ると

ぼくのポケットから落ちた部品だった。



そうだった、大事な部品だ。

どうもありがとう、とその女性に告げると

ニコッと無垢な笑顔で答えてくれた。



・・・、でも、この部品、

大事な・・・なんだっけ、

夢みたいな話だな・・・



目が覚めた。



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