念願の場所、そして祈り。(後編)
妻はお好み焼きがとても好きだったらしい。
晩年までそれと知らずに過ごしたぼくだ(すまぬ)。
一方ぼくは彼女ほどの執着がない。
だがしかし、ここは広島じゃけん。
客の目の前で焼くと聞いていたので
わくわくしながら待つが、
いつになってもスタートする気配がない。
一方、食べ終わって歓談中のお客の目の前では
新たに調理が。
あれ、おかしいな。
見ると、具はぼくが頼んだものだし。
勇気を出して尋ねてみる。
「それ、もしかして私が頼んだやつですか」
「はい、そうです!」
そうか、別のところで焼くということがあるのか。
調理するところを見たかったので移動すると、
今度はぼくの席に程近いところで
焼きそばを焼き始める。
ふ〜ん。
そして最終的には、
ぼくの席の前で調理が進む。
ふ〜ん。
時折、「魔法の粉」のようなものが
振りかけられるんだけど、
なんだろう。
それにしてもすごい量。
一日一小食に慣れた身体では
完食はとても無理だとあきらめ、
半分以上は
お土産にしてもらい、
ホテルに戻って、ゆっくりと完食。
一年分のお好み焼きを食べた気分でした。
二人羽織の妻は、きっと喜んだに違いない。
よかったね。
爆睡し目覚めると、
日の出をちょっと過ぎた頃だった。
急いで原爆ドームに向かう。
日の出に合わせて祈りたかった。
ジョギングをしている人、
早起きの老人(ぼくも含めて、ね)くらいなので、
人は少なく、たいへん静か。
場所を定めて、しばし祈る。
太陽は後ろのビルに隠れて
昇ってくるのが見えないまま。
朝焼けは、なかった。
ま、そういうもんじゃけん。
次々とカラスが
ドーム上に集まってくる。
きっとビルの向こうから太陽が昇ってきたのだろう。
東京でも何度も目撃しているけど、
カラスたちはどうやら日の出が好きらしい。
ぼくも負けず劣らず好きだぞ。
さて、次の旅がある。
そろそろ、ここともお別れだ。
路面電車のデザインを楽しんだり、
広島だから
自動車はMAZDAだらけかと思ったら
そうではなかったけど、
今となっては珍しい
EUNOS COSMO ROTARY COUPEを目撃したり、
広島を味わった。
存分に祈り、瞑想した。
きっと、父も、母も、妻も、
四人羽織で一緒くたになって
味わってくれたに違いない。
うん、来て良かった。
2016-08-14 14:30
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