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タコと、シロナガスクジラ。 [超夢]



あけまして おめでとうございます。



初夢は、新年初めて見る夢

ということなので

今日未明に見た「超夢」を

初夢、ということにします。



とても、おもしろかった。



本年も よろしく お願いいたします。



・・・・・・・・・・・・・・・


海底には今でもたくさんの

沈没船が横たわっているという。



その中でも帆船、しかも

木造で形を保ったものもあるという。



それを現代に再現できないか。



そういうプロジェクトがスタートした。



しかし劣化が著しいので

引き上げるのは至難。



そこで、主になるのは

海底探査システムによるカメラ映像の解析。



プロジェクトの主催者は

世界中の様々な分野の専門家達を

オーディション形式で募ることにした。



その経緯はすべてネットを通じて

リアルタイムで公開された。



総勢200名を超えたであろうその中には

海底探査技術はもちろんのこと

造船、設計、応力計算などの他に

「直感力」のスペシャリスト

「決定力」のスペシャリスト

なども含まれていた。



日本からは宮大工が一人そして

植物学者が一人参加した。



では一般人は参加できないのか

というと、そうではない。



その外側に

「海洋生物の目」

「海洋鳥類の目」

というジャンルがある。



例えば「海洋生物の目」には

様々な魚類、小さなものから大きなものまで

ヤドカリ、イワシ、ヒラメ、イカ、タコ

カツオ、マグロ・・・などなど。



「海洋鳥類の目」には

言わずと知れた

カモメ、ウミネコ、カツオドリなどなど。



応募して合格すれば

それらの「目」になり

海底の船なり進捗状況を

いつでも見ることができる。



それでも外れてしまったとしても

まだ参加できるオプションがある。



専門家達はSNSにアカウントを作り

彼らをフォローすることによって

いつでも意見を述べられるのだ。



世界中を巻き込んだこのプロジェクト。



黒い森リス家族も

「海洋生物の目」枠で応募した。



すると末子リスが当たった。



「シロナガスクジラの目」だった。



すごいじゃないか。


地球上で一番大きな哺乳類が当たるなんて。



家族みんなで大喜び・・・

の、はずだが

末子リスはさほどうれしい様子を見せない。



どうしたの? と訊くと


「あたし、タコがよかったの。

だって、タコだったら

自由に船の中を移動できるでしょ?

隅々まで見て歩けるでしょ?

でもシロナガスクジラじゃ・・・」



検索してみると

「タコ」はたしかに一番人気だった。



ま、いいじゃないか

世界中の人々が応募した中から

当たっただけでもすごいことだし

世界で一番大きな哺乳類なんだから。


海鳥だったら

海の上からしか見られないし。



そうなだめると

だんだん元気が戻ってきた。



プロジェクトがスタートすると

話題は世界中へあっという間に広まり

専門家達による解析・分析・再構築も

どんどん加速して進む。



「タコの目」へのアクセスはうなぎのぼり。


一方

「シロナガスクジラの目」へのアクセスは

ほぼ、ゼロ。



ん〜、どうしたものか

末子リス、ちとかわいそう。



といっても、なぁ

あまりに大きいから

沈没船にはうかつに近付けないし

遠くから眺める映像だけじゃ

おもしろくないもんなぁ。



そうそう

この「目」のシステムの面白いのは

コントロールは

マウスとかジョイスティックとかではなく

「なりきる」ことで行われる。



タコならタコに

クジラならクジラに

なりきる必要があった。



そしてその「なりきっている動作」は

タコのアイコンをクリックすると

「なりきってる人」に変わり

いつでも見ることができた。



それ見たさに

SNSにアカウントを作り人もいたほど

「なりきり動画」に人気があった。



末子リスは日々

クジラの動作の練習をしていた。



やがてとうとう

まだバーチャル世界ではあるが

沈没船が再建造され、試航行が行われた。



バーチャルとはいっても

もう、ほぼ、現実との区別はない。



末子リス、この日を待っていた。


やっと帆船の近くを並走できる。



モニター画面を見ながら

シロナガスクジラになりきる末子リス。


親から見ても、上手だ。


とくに悠々・優雅に泳ぐその様は

とても子リスとは思えない。



と、その時

一瞬、モニター画像がフリーズした。



今までこんなこと、一度もなかったぞ。



するとすぐに


「ただいま世界中からのアクセス増大によって

大変負荷がかかっており不安定です」


というアナウンスが表示された。



たしかに、そうだよね

みんなが待ち望んでいた瞬間なんだもの・・・


あ、また止まった・・・



止まろうがどうなろうが

末子リスはさらに真剣に

一生懸命クジラになりきってる。



そりゃ、そうだ

この時くらいしか

近くで見ることができないんだから。



すると、子リス

とつぜん不思議な行動を取り始めた。



いったん海中へ潜る動作をしたと思うと

再び海面へ向かい上昇し始め

大きく口を開けたのだった。



訊くと

緊張しすぎて

お腹が空いちゃったのだとか。



空いたのは自分なんだけど

自分は今、クジラだから・・・



その時だった。



モニタースピーカーから

各国の視聴者たちが


「クジラ、あぶない!」

「クジラ、近すぎ!」

「クジラ、どけ!」


と叫んでいる。



シロナガスクジラが

プランクトンを追って

海上に出て大口を開けたその時。



目の前には帆船の穂先が。



ぶつかる!



そこで画面は、フリーズした。



いくらどこをクリックしても

その画面が再び動くことはなかった。



ただ。



クジラをクリックすると

その動作をしている子リスの姿

つまり大口を開けて

床にしゃがんだ位置から

海の上に伸びようとしている

「アクション画面」だけは

静止画として見ることができた。



つまり世界中の視聴者達は

この子リスの静止画を見たことになる。



数分だったか

数十分だったかの後

主催者からのメッセージが流れた。


「世界中からのアクセスのあまりの多さに

システムが完全にダウンしてしまいました。


また、航路ナビに

根本的不具合を確認しました。


シロナガスクジラが悪いのではなく

ナビに問題があり航路が不適切でした。

クジラを責めないであげてくださいね。


ここで、皆さんにお詫びがあります。


このプロジェクトにはひとつだけ

「守秘義務」がありました。


それは

バックアップを取らない、ということです。


バックアップがあるという安心感は

「勘」を鈍らせます。


そう信じて生きてきた私は

今回一切のバックアップを取ることを

すべての参加者に禁止しました。


ですので、皆さんがご覧になったものは

すべてリアルタイムの出来事で

バックアップは、ありません。



もうひとつ、お詫びです。


システムに根本的な欠陥が発見されたら

このプロジェクトは、海底へ戻ります。


今回は、その欠陥が見つかりました。


ですので、すべては海へ戻します。


そして私が

二度と手をつけることはしません。


では、みなさん、ありがとうございました」



メッセージが終わったそのとき

PCの画面が一瞬動いたかと思ったら

「page not found (404)」と書かれてあった。



え? と思って調べてみると

フォローしていたアカウントも

すべて消えていた。



そうか、海へ戻ったんだね。



それもまたよし。



未子リスの静止画も消えたね、よかったね。
(ぼくは、面白くて好きだったけど)



楽しかったなぁ。



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