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そば屋が、そば屋の宣伝を、しますともⅡ 浦和「庵 浮雨」(un peu アン・プゥ) [そば屋ともだち、そばとも、とも]

女将の5日間の自宅治療(月一であります)が無事終わり、
ぼくも気持ちが楽になり、
急に行ってみたくなった浦和「庵 浮雨」さん。


「つれづれ蕎麦」のYukaさんの美味しそうな記事を読むと、たまらない。
http://chibiyukarin.blog4.fc2.com/blog-entry-1637.html

いろいろと新作をやっているらしい。

トマト、クリームなどを素材としたそばを作ったという。



これは、いかないわけには、いかない。
(敵前視察ではありません。ご主人とは仲良しです)



ぼくは黒森庵ではトマトを素材にしたそばを作っているし、
ホワイトソースなどを素材にしたそばも作っている。

しかし。

たとえおなじ素材を使ったとしても、
作る人間の「作りたい方向」で、味はまったく変わってくる。



ん〜、楽しみ。



今日ははるちゃん(庵 浮雨のご主人のことです)の選ぶ、
おいしいお酒も飲みたいので、電車で、GO。



井の頭線、京王線、埼京線、高崎線と乗り継ぐのだな。


京王線に乗ると、いつも気になる車内広告。

京王CM中.jpg

着物を着て、礼儀正しい姿勢で、
「なにそば」を食べているのだろう・・・。

・・・「かけそば」?・・・、

・・・薬味もなにもない・・・、

・・・どこのそば屋さん?・・・、





京王中国語中.jpg

・・・おや、日本語だと思ったら、中国語なんだな・・・、
・・・日本語のほうが小さい・・・、


いやいや、そんなことに気を取られている場合ではないのだ。


乗り換えを間違わないようにしなければ。



新宿駅。

jyukusinnjyuku.jpg


・・・おお、学生さんはたいへんだ・・・、

・・・がんばれ、みんな・・・、

とつぶやいてみる。



目に入るいろいろなことが新鮮で、
久しぶりの電車は楽しいなぁ。



お、あっというまに。

un peu.jpg
(ちょっと道程をはしょっているでしょうか)



おお、はるちゃんが笑顔で迎えてくれる。


ハグしたかったが、カウンターがじゃまでできず。



元気そう、ちょっとふっくらしたかな。
(順調、ってことだな。よかった)



もうれつに暑かったので、まずはヱビスの小瓶をいただく。



お通しはおから。

そして自家製豆腐をお願いする。

豆腐とおから.jpg
(豆腐が自家製ですから、おからも自然と自家製になりますね)


ん〜、めっぽう美味い。

とっろ、とろ。

スプーンで食する。



豆腐には塩も用意されているが、
その必要はまったくないほど、味が濃厚、甘い。



ぷは、ビールが、すすむ。



おからも絶妙。

おから.jpg
(大根おろしではありません)


超粗碾きとでもいうのだろうか、
ぜいたくにも、大豆の「割れ」だらけ。
口の中の食感が楽しい。
汁も飲み干す。


これ、生まれて初めて食べたとしたら、
ほかの豆腐とおからは、別の食べ物だと思うに違いない。


一息ついたところで、冷酒を。

「豊香」 長野 純米直汲み無濾過生原酒

sake 1.jpg

香り豊かで切れがあり、しっかりしていながらさわやか。



料理は、はるちゃんの得意技のスモーク。

鴨とたらこの薫製.jpg


鴨のスモーク。
鴨.jpg


たらこのスモーク。
たらこ.jpg

どちらも素晴らしい。

鴨は風味非常に濃厚で、申し分ない。

たらこも、粒が口の中ではじける。
どうだ、というくらい風味濃厚。

後ろに見えるきのこのマリネ・マスタード風味もまったく手抜きがない。
(鴨の後ろにもトマトベースの料理があります。写真失敗。こちらの味もたいへんよし)



お酒をもう一ついただく。

「仙禽」 栃木 純米吟醸無濾過原酒

sake2.jpg

こちらも香り高く、風味濃厚でありながら、切れる。

いいお酒ばかり。

そしてリーズナブル。


もう一品いただいた。

ブロッコリーと鳥皮.jpg

ブロッコリーと、鳥皮と、きのこのマリネ。

これもまたすばらしい一品。
素材一つ一つがどれも美味しく、調和し、
口に含むと、はるちゃんの世界が現れる。



どの料理を食べても、その度に、
どこか外国へタイムスリップするような感覚にとらわれる。

ここ、どこ?

ぼく、だれ?

というくらい、そば屋ではないな、「庵 浮雨」さんは。



酒には強くないぼくは、もうこれで充分。



それではと、そばをいただく。


今日は、これをいただきに「庵 浮雨」にきた。

そば品書き.jpg



まずはせいろに二種に盛られたそばと、もり汁。
蕎麦二種.jpg
右が福島。 左が茨城です。



うれしい。

もりそばも、しかも産地違いが二種、同時に味わえる。



なにもつけずに、手繰る。

どちらのそばも、口に含んだとたんにそばの香りが襲ってくる。
たいへん香り高く、甘みもあり、甲乙つけがたい。
「眠庵」で修業されただけあって、すばらしいそば。


もり汁は、「眠庵」とは異なる「庵 浮雨」独自のもの。

もり汁.jpg
(ちいさく、かわいい猪口ですね、ぼくも小さな猪口が好きです)


しっかりと仕事がなされている存在感のあるもり汁。


その、もり汁を少しつけて、いただく。


蕎麦の香り、ほどよい腰、舌への食感を味わう間に、
いつのまにか口いっぱいに広がってゆくはるちゃんの世界。
一気に食べたいほどの美味しさ。


でも次が待っている。


これだ。

クリームそば.jpg

花巻クリームせいろ。


ビシソワーズのようなつけ汁に、なんと生海苔。

細葱の緑。、オリーヴ・オイルの黄色の点々と相まって、
見ているだけで楽しめる。


ただそれだけでいくらでも食べられるそばを手繰り、
花巻クリーム汁に付けていただく。

クリーム蕎麦とはし.jpg



口の中に広がる濃厚甘美なクリームの世界。
それにたたみかけてくるのは、生海苔そしてアサリの風味!


ん〜、すばらしい。


次のお目当ては、これだ。

トマト蕎麦.jpg


黒森庵の「赤もり」(トマトソースベースのそばです)とはまったく異なる。

ラタトゥイユ(フランス料理ですね Ratatouille)が、
冷たいそばにかかっている。

そのまま食べてももちろんよいが、
ここではるちゃんのセンスが光っているのは、
なんと(「なんと」を今日は何回使っているでしょう)、サフランベースの汁。

サフラン汁.jpg

これがまた、じつによく絡み合う。


あっという間に食べ終えてしまいました。


最後に花巻クリーム汁に、とろとろの別製のそば湯を加えていただく。


もう至福です。


来てよかった。


このような、日本そばを「パスタの一種」ととらえる人が、
これからますます増えてゆく感じがしています。



はるちゃんは、フレンチとイタリアンの料理職人であり、
同時に、「眠庵」で学んだそばの職人でもあるのですね。



すべてのバックボーンが、しっかりしている。

そこからこうした楽しい発想が生まれますね。



これからどういう風に展開してゆくのか。

じつに楽しみな、若きご店主はるちゃん。


がんばってください。



永福町から1時間ほど。
浦和駅からは266歩ということなので、決して遠くは感じませんでした。


上中里.jpg
帰路、あまりに豊かな気持ちだったので、
うつらうつらしてしまい、乗り過ごした(本来は赤羽乗り換えのはずでした)。



ごちそうさまでした。


庵 浮雨 (un peu アン・プゥ)

埼玉県さいたま市浦和区高砂2-8-11
ナカギンザ内
048-825-0468
11:00〜14:00 / 17:00〜21:00
日曜定休
禁煙