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そば屋が、パン屋の宣伝を、しますとも。「タビタのパン」 [そば屋ともだち、そばとも、とも]

もう何十年前だろう。


ぼくが企業デザイナーをやめて八ヶ岳に移り住んだ時期、

ある日、若いカップルがぼくの家にやってきた。

たしか富ヶ谷「ルヴァン」の甲田さんから紹介された、
そういうようなお話だった気がする。
(甲田さんとぼくは、もうずいぶん長いお付き合いなんだなぁ)



ボロボロ(失礼)のジムニー(軽ジープですね)に乗ってきた彼らは、
会ったとたんにほっとするような、
独特の暖かさを持った、純朴なカップルだった。


わざわざ八ヶ岳のぼくのところまできてくれた、
理由を尋ねると、こういう話しだった。



自分たちはふたりとも、「ルヴァン」でパン焼きと石臼製粉の技術を学んだ。

これから自分たちの店を開きたい。

それは石臼自家製粉、自家製酵母、石釜焼きの店だ。

その前に、ヨーロッパへ行って、
自分たちの目で、彼らがどういうふうに石臼で製粉し、
どうやって酵母を管理し、
どうやって生地を発酵させ、
どんなパンを焼いているのか知りたい。

どういうふうに石釜を作っているのか、知りたい。

できれば、アルバイトとして、現地で焼いてみたい。

加東さんはイタリア生活の経験があるから、
どこでもいいから知っているパン屋さんはありませんか?

というような話しだった。


じつに基本をおさえた、地に足の着いた話の筋に、
ぼくは驚いた。


残念ながら、ぼくはイタリア在住当時はデザインの仕事に追われていて、
パン屋にはそれらしいツテはなかった。


それでも、なにがしかのアドバイスをお伝えし、
お別れしたかと思う。



しばらくして、ヨーロッパ各地から、
彼らの絵はがきが届きはじめた。


え? もう行っちゃったんだ。



各地のパン屋さんにもぐり込み、
実際に製粉、パン焼きをやらせてもらっているという。



すごい行動力、バイタリティ。

おとなしくて、そういう感じの二人とは思えないのになぁ。



そのうち、ぱたっと便りが途絶えた。


ちょっと心配になるくらいの間隔の後に、
再びいただいた便りは、今度は北海道からだった。



私たちは、今、住む場所を探して、日本中をまわっています。

羊蹄山の水が美味しいので、ここにしたいと話し合っています。



そういう内容だった。



ああ、このご夫妻は、ほんとうに根本を外さない。



しばらくして、また便りがあった。



今、開田高原にいます。

ここはすごく良いところなので、ここに住むことにしました。

夫は、自分たちの家を建てるために、大工の見習いを始めました。





とうとう、パン屋を始めるという便りかと思ったら、

大工になる、という便りだった。



まずは自分たちの巣作り、ということだ。


がんばれ、がんばれ、とぼくと妻(現女将ですね)。



それからまたしばらくして、お便り。



大工は一応見習いを卒業しました。

家はなんとか建てはじめました。

と基礎打をした写真付で近況を知らせていただいた。


赤ちゃんも産まれたそうだ。


家族はティピー(インディアンのテントですね)に住みながら、
目の前で自分たちの家を夫婦で造っている。



まるで「大草原の小さな家」だ。



時折いただくお便りと写真は、読んでいて感動そのものだった。

お二人が大きな愛情で育んでいる、赤ちゃんの写真、

ご主人がねじり鉢巻で、孤軍奮闘して自宅を建てている写真、

「とりあえず、住める部屋ができました」(家ではなく、「部屋」です)

「やっと、お風呂ができました」

という報告写真、などなど。



極寒の開田高原の冬の、家族風呂は最高だっただろう。




そうした努力の末に産まれたパン屋さんが、「タビタのパン」です。



こういう看板や、
タビタ看板大.jpg



当時使っていたであろうものたちがあったり、
こんなの1.jpg
ストーヴ.jpg



こんなだったり。
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店はこういう感じです。
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奥に自家製の石釜が鎮座しています。


タビタの全景
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奥が店舗兼母屋で、手前でオープン・カフェを楽しめるスペースになっています。


主役のパンたちです。
胡桃のカンパーニュ.jpg
胡桃のカンパーニュ。


パン・ド・ミ.jpg
パン・ド・ミ。


モカ・マフィン.jpg
モカ・マフィン。


あんぱん.jpg
あんぱん。


干しリンゴのビスケット.jpg
干しリンゴのビスケット。

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あ、これはタビタの愛犬ですね。



喫茶もあり、店内でも、戸外でも飲食ができます。

晴れていたら、もちろん外がお勧めです。


メニューです。
メニュー1.jpg
メニュー2.jpg


パンはほとんど全種類いただきましたが、
どれもこれも、
ほわっと、
愛情がこもっているのが伝わってくる、
たいへん美味しいものでした。





開田高原の懐に抱かれた場所にある、タビタで至福のひとときを過ごし、

近くのペンションでおみやげに、といただいた袋を開けると、




大カンパーニュ.jpg

ふわ〜っと、香り立ち込め、風味は噛み締めるほどに深く、

最高のカンパーニュでした。



お近くを通ることがあれば、ぜひお立ち寄りください。

お勧めします。




「タビタのパン」
http://www.jotenki.com/tabita/index.html


長野県木曽郡木曽町開田高原西野6322-487

0264-44-2870

月・火曜(祝日の場合は営業)

JR中央本線木曽福島駅からタクシーで40分

駐車場あり(無料)

(夏期は、とても混むようなので、電話をしてからのほうがよさそうです。
 価格は、2008年のときのものです)