生まれて初めて、家を建てた。
そろそろ還暦なぼく、だ。
家の一軒でも、自分の手で建ててみたいじゃないか。
大工さんも、
水道屋さんも、
ガス屋さんも、
電気屋さんも、
左官屋さんも、
だれの手も借りずに。
場所は、屋上。
一番日当りのよい場所だ。
見晴らしも良い。
基礎工事。
敷地の上に、プチプチシートを敷いて、
防水性と断熱性を高めたつもりだ。
その上には段ボール箱を一カ所破いてシートにしたものを敷いた。
できた。
強風の中、基礎工事から始まって、
30分もかかってしまった。
昼間で、無風だったら、多分20分くらいでできるに違いない。
出来上がったときの室温は
5℃(外気も同じ)。
それが、
ぼくが新居に入り10分もしないうちに室温は、
8℃に上昇。
つまり、狭い部屋だから、
ぼくの体温で部屋の温度がぐんぐん上がってゆくということだ。
ぼくは人間ストーヴ化するわけだ。
なんてエコなんだ。
5℃なんて、じつはぼくには屁でもない。
昔、八ヶ岳で生活してた時は外気温−18℃まで下がった。
そのとき、ぼくは全裸になって外に出てみた(別荘地なので、冬はほとんど誰もいない)。
寒くないといえばうそになるが、
それでも太陽が出ていれば、なんとかだいじょうぶだった(靴は穿いてたけど)。
夜は、必ず窓を少し開け、外気を取り入れて眠った。
ストーヴは消して寝た。
母は若い頃女優をやっていて、
巡業先の宿で、窓がしっかり閉まらなくて、
朝起きたら布団の上に雪が積もっていたという話をしてたくらいだから、
人間、これでもけっこう寒さに耐性はあるのだろう。
ま、それでも、ね、
湯たんぽは大好きなので、足元に入れて眠った。
翌朝、カラスの鳴き声で目覚めた。
深い眠りだったようで爽快。
さすがに手暗がり、強風のなかでの新居工事だったので、
いろいろと問題がなかったわけではなかった。
寝相が悪かったというのもあるにはあるが、
そこかしこ、ゆがんでいた。
まぁ、でもこれは段ボールの特性ということもある。
ぼくの身体が出す水分によって、室内側の段ボールは伸びる。
一方、外側の段ボールは太陽の日差しで縮む。
だから歪むのは仕方がないとしても、
段ボール同士の接合部はゆるすぎた。
それでもまったく寒さを感じずに眠れたというのは、
ほんとうにすごいことだ。
暗がりで、情報が掴みきれなかったのが、
雪解け水。
段ボール一枚がふにゃふにゃに。
だいじょうぶだと思ったんだけどな。
おし、次の新居は「高床式」にしよう!
それでも、湯たんぽの温度は、
まだ42℃あった。
新居からの眺め。
あまりに気持ちがよく、そのままぼんやりしていたら、二度寝をした。
ふたたび起きる。
外界とは一応遮断されているのだが、
なにしろ段ボール、紙だ。
外の様子は手に取るように分かる。
自動車が通る音、遠くで踏切がなっている音、
街が活動する音、
それらの音を聞くでもなく聞いていたら、
ぼくの頭の上あたりで、
「かさこそ」
と段ボールを引っ掻く音が聞こえた。
「ねこ?」
とも思ったが、ねこだったらもっとどっしりとした音のはずだし、
だいたい上に乗っかったらもっと段ボールがへこむはずだ。
その音の主は、小鳥だった。
ぼくが寝ているなんて、知らないにちがいない。
その小鳥が、ぼくの顔と目と鼻の先にいる。
想像するだけで、うれしくなってくる。
しばらく、小鳥のかさこそ音を聞き、
やがて飛び立つのが聞こえ、
ぼくは新居をあとにし、
階下のダイニングへ行く。
長女が、
スコーンと珈琲を用意してくれていた。
このスコーンのレシピは、@shizumin_gerbilさんのだ。
さくさくぱくぱく、ごくん、
ああ、こんなに幸せでいいんだろうか。
「とうさん、顔色いいね。とうさんは外で寝るのがあってるのかもね」
と言ってくれた。
還暦の男が、
段ボールで、
なにやってるんだろう、
と思うのでなく理解してくれている。
うれしいな。
おし、今日は新・新居を作ろう。
寝相が悪くても形が崩れず、
雪解けでも段ボールがぐずぐずにならないように高床式にしよう。
今日は天気予報では「雪」の予報だから、
その対策もしよう。
タープを張った。
錆びたスチール棚で、高床の土台にした。
コンパネを一枚。
6カ所にL字金具。
プチプチと段ボールシート。
かなり完成に近くなった。
両サイドは、園芸用パイプで固める。
満足な、ぼくだ。
いろいろと微調整もかねてしっかり作ったので、
基礎工事から始まって2時間かかってしまった。
でもこれで、雨でも、雪でもだいじょうぶ(たぶん)。
どうせなら雪になってほしいな。
東京だと、なかなかこういうチャンスってないからね。
これで、基礎実験が終わったら、
いよいよ、モバイルハウスの設計に着手!
わくわく。
2013-01-22 01:07
nice!(0)