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100。



母が100歳を迎えた。


ぼくが知っている肉親・近親の中では最も長寿。



ぼくは人の寿命は長ければ幸せとも持っていないし、

早く寿命を迎えたとしてもそれを不幸だとも思わない。



でも、それはそれ。

母が満で100歳を迎えた。

祝おう。

母は若い時分はSKD(松竹歌劇団)に在籍していた。


母、プロマイド。.jpg
母のプロマイド。


はて?

横道にそれるが許してほしい。


「プロマイド」が正しいのか?

それとも「ブロマイド」?


調べてみた


なんだ、どっちでもいいのか。

62年間、今日までずっとどっちなんだろうと思っていたから、

これで一つ、懸案事項が減った。


ちなみに父方のおばあちゃんは、

デパートは「デバート」、

ヘリコプターのことを

「ヘリコブタ」

と言っていた。

張子の豚みたいでちょっと可愛いね。



あ、母の話ししてたんだった。


水の江滝子さんと。.jpg
水の江滝子さんと。


父はよく「ジェスチャー」というTV番組に出ていたこともあり、

よって、その女性軍キャプテン水の江さんとは父も仲良し。


SKDの卒業生が年に一回我が家に集まる日があって、

水の江さんも時々顔を出されていた。

そのときはもう、賑やかなのなんの。

出前の寿司食べたさに、

熟女の皆さんがつける香水の強烈な匂いさえも我慢するぼくだった。



母はダンサーだけでなく女優としても活躍していたようで、

父と結婚するときは父の10倍の給料をとっていたそうだ。

11人兄弟姉妹のなかで働き頭だった母が結婚するのは、

だから周囲からは大反対にあったという。


フラメンコ。.jpg
フラメンコも踊ったそうだ。

でも当時のフラメンコは「形だけのもの」だったといって、

50過ぎたあたりから本気でフラメンコを一から勉強しなおしたりする母だ。



なんつたって、気丈。



大昔、つまり女優業をやっていた頃のこと、

電車に乗っていてチンピラに絡まれたことがあったという。

その時、

「下から出りゃ、つけ上がり、

上から出りゃ、ぶら下がり、

私を誰だと思ってんだい、マムシのおマサを知らないのかい」

と言い放ち、その場でチンピラは退散したという。


あくまで本人談だが、

それを裏付けるような出来事が実際にあった。



ぼくが中学生の時、我が家に強盗が入った。

父は在宅だったが別室におり、

ぼくはまだ学校から戻っていなかった。


犯人は母に包丁を突きつけ、決まり文句の

「金を出せ」



そのとき母はなにをしたかというと、

「あんた、なに危ないもの持ってんのよ、それ、どけなさいよ」

といって包丁の刃を持って下に向けさせた。


虚をつかれた犯人は無言のままそれに従い、

母は畳み掛けるように、

「お金ならお財布に入ってるわよ、そっからとって行きなさい」

といって財布を投げ出すと、犯人はそれを持って逃げて行った。

中には1万2千円。

被害はそれだけですんだ。



肝の座り方が尋常じゃない。



そういう母に育てられたものだから、ぼくは気が弱くて弱くて。


そらないな、

ぼくはぼくで気が強い。


だから母とはずいぶんともめた。

それは彼女が70になっても、

80になっても、

90になっても、

もめるときはもめた。



やっとそれが薄らぎ出したのは95歳を越えたあたりだろうか。

背骨の圧迫骨折は6箇所に及び、

それだけじゃなく、

自室で転倒し大腿骨骨折して、手術をして、

それは回復したものの誤嚥性肺炎を引きおこし、

それもなんとか乗り越えたあたりから、

やっと釣り合うくらい、

それくらいエネルギーの強い母。



震災を体験し、東京が丸焼けになるのを我が目で見、

戦災では空襲を体験し、

愛する夫は激戦地ニューギニアで安否もわからずという日々を過ごし、

無事帰国するもマラリアで生死をさまよい必死の看病で九死に一生を得、

なにもないところから生活を立て直してゆき・・・、

6畳一間に間借りして(浜田山。今でも大家さんご家族と親交がある)、

やがて夫が「大番」という映画で有名になり、

そこからやっと生活が安定し出すという日々だったのだから、

強靭な心というのはそうやって形成されたのかもしれない。



そういう母の元で生きることを選んだぼくは、

彼女との関係から何を学ぼうとしているのか。



ま、そんなことは、いいや。


今日は100歳の誕生日。


だれでもが迎えられるわけじゃない、

特別の誕生日。




これ、


 これをね。.jpg
これをね、


母である、あなたにね。.jpg
母である、あなたにね、



「え? なに? 聞こえないよ」



だから、ぼくから、ね。.jpg
だから、ぼくから、これを、ね。


最近は母、耳が遠いな。


じゃ、これだ。


おめでとう、


100歳おでめと、ちゅ。.jpg
かあさん、ちゅ。



そして、母と一緒にぼくを育ててくれてありがとう、


こんな時もありました。.jpg
とうさん。



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