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「家」、と、「巣」。 [小黒森庵]



子どもの頃、我が家は川の字で寝ていた。

たいてい、父はぼくの左、母は右だった。


父も母も、寝付きが良かった。


一方ぼくは

極めて寝付きが悪かったので

よく一人で天井の板目を見ながら

なんでぼくはこの家に生まれてきたんだろう

と思っていた。


そして

世の中には自分の家もなく

寒く寂しい生活を送っている人もいるだろうに

なんでぼくはここで寝ていられるのだろう

と思っていた。



やがて様々な人生経験をするにつけ

なんで人は借金をしてまで

土地・家を欲しがるのだろう

人間以外の動物はお金もない代わりに

土地も家も借金もなくて

でも心配なく生きている

そう考えるようになった。



そのさまざまな動物たちにも

でも

「家」はなくとも

「巣」程度のものはある。


ぼくも今までに何度か「巣」は目撃している。



その「巣」にとても近いのが

インディアンと呼ばれる人々の


Tipi01 (1).jpg
「ティピー」

あるいは遊牧民族の人々の


life-1.jpg
20080913143804.jpg
「パオ」「ゲル」だ。



そう。



動物たちの作る「巣」同様

「ティピー」も「ゲル」も「パオ」も

基礎というものがない。



現代の建築というものは

強固なセメントで固めた基礎の上に

家なりビルを建てる。



でもそれは

地べたと一体

地球と一体な訳だから

地震が起きれば地面と一緒に

何千万・何億・何十億円の建造物は揺れ動く。



大地震ともなれば

凄まじい縦揺れ横揺れが起き

それとともに

上物としての建造物も連動して動き

やがて耐えられなくなった建造物は崩壊する。



一方

「ティピー」「ゲル」「パオ」などは

地べたに固定されていない。



よって

地べたがいくら激しい振動をしたとしても

それとは「無縁」なのだ。


さらに超軽量だから

そのほとんどは「いなして」しまう。


万が一にも

もし倒れることがあったとしても

超軽量なゆえに

中にいる人間はかすり傷程度で

倒れたティピー・ゲル(パオ)は

その単純な構造ゆえに

あっという間に修復が可能だ。



デザインというものを

自分の職業にしたいと思う頃から

ずっとぼくの心には通奏低音のように

「人間も『巣』程度でいいんじゃないか?」

という気持ちが、あった。



ぼくが大好きな言葉がある。



「欲無ければ一切足り 求むるあらば万事窮す」

「起きて半畳 寝て一畳 天下取っても二合半」



通奏低音としての「ティピー」「ゲル(パオ)」

そして

この2つの言葉を元に

今回ぼくは小黒森庵を作った。



PC191836.jpg
やっと、気持ちを形にすることができた。



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